奈良基督教会 会堂 耐震対策工事

耐震工事のため2019年12月28日より当面、見学することはできません。ご了承ください

日本聖公会奈良基督教会と文化財建造物について

 日本聖公会奈良基督教会は、1885(明治18)年に大阪の聖公会宣教部がアメリカ人伝道者ジョン・マキム牧師を派遣したことに始まります。その2年後に現在地の近くに教会を開き、1909(明治42)年に現教会の土地を購入し、本格的な会堂建設の計画を進めました。
 日本聖公会奈良基督教会会堂(礼拝堂)は、1928(昭和3)年に工事に着手し、1930(昭和5)年に竣工しました。設計及び施工は、奈良県内で古社寺修理の経験をもつ大木吉太郎(おおき きちたろう)氏の手によって行われております。隣接する親愛幼稚園舎は、当初は教会の会館として計画されておりましたが、竣工間際に幼稚園舎として使用することとなりました。1929(昭和4)年12月に竣工し、翌4月から親愛幼稚園として開園いたしました。

建造物への耐震対策

 日本聖公会奈良基督教会会堂は、2013(平成25)年に耐震診断を行ったところ、耐震性能が不足することが判明しました。2015(平成27)年に重要文化財に指定されたのち、2017(平成29)年に詳細な耐震診断を実施し、耐震補強案を策定いたしました。2019(令和元)年10月から耐震対策工事が行われ、工事完了予定は2020(令和2)年11月末となっております。
 会堂と同時期に建設された親愛幼稚園舎についても、2013(平成25)年の耐震診断によって、耐震性能が不足することが判明しました。こちらはその後すぐに詳細な耐震診断と補強案の策定を行い、2014(平成26)年7月から9月にかけて耐震対策工事が実施されました。幼稚園の一部として使用されている会堂の渡廊下部分は、親愛幼稚園舎と同時に耐震補強が行われております。

会堂の耐震補強計画

 大きな地震が発生したときに会堂がどのように変形するのかを構造解析によって確認したところ、南北方向では重い瓦屋根を持つ身廊部分の揺れを耐力のある外壁まで伝えきれず、身廊部分が大きく変形するという結果となりました。また、東西方向も耐力壁が両端にしかないため、中央部分が大きく変形し、震度6強程度の大地震の揺れによって倒壊する可能性があることが分かりました。
 大地震による会堂の倒壊を防ぐためには、耐震補強を行う必要がありますが、文化財建造物ですので景観や部材の保存を考慮して補強を行わなければなりません。

 この会堂の補強方法においては、①多くの礼拝者の立ち入る施設であるため、一般の建物と同等の耐震性を確保すること、②礼拝空間である内部の意匠を保存すること、③玄関のある西側の景観を保存すること、④当初の部材に手を加える範囲を最小限とすることの4点が特に重要であると判断され、次の補強を行うこととなりました。

①側廊の天井裏に鉄筋ブレース(筋かい)補強を設置し、身廊部分にかかる南北方向の揺れを外壁まで伝達させる。
②建物の裏側(東側)に鉄骨パットレス補強を設置して、東西方向の変形を抑制する。

 ②の鉄骨パットレス補強は東側からは見えてしまうものですが、いくつかの補強案を比較検討した結果、先に挙げた4つの点において最も影響が少ない方法と判断されました。
 これらの補強のほかに天井の落下防止やパイプオルガンの転倒防止、浮いている外壁漆喰の塗り直しも地震対策としてあわせて行います。

 会堂は、南北に長い長方形平面となっており、身廊(しんろう)部分とその両側の側廊(そくろう)部分を会衆席とし、その奥に聖所と至聖所を設けております。これは、三廊式パシリカ型というヨーロッパの教会で古くから用いられている形式に倣った平面構成です。一方で、建物の意匠は、隣接する奈良公園の風致景観保存のために、外部・内部とも純粋な和風意匠でまとめられております。長押(なげし)や欄間(らんま)などの古建築から着想を得た伝統的な要素が駆使されており、各部のバランス、細部とも秀逸な意匠となっております。
 園舎は会館として設計されたため、4室の間仕切りを開放すると1室として使用することができます。園舎は会堂と一体に設計されたため、会堂と同様に内法長押(うちのりなげし)や舟肘木(ふなひじき)が設けられた和風建築となっております。
 会堂と幼稚園舎は、ともに1997(平成9)年7月に登録有形文化財、2015(平成27)年3月に奈良県指定有形文化財となり、2015(平成27)年7月に国の重要文化財に指定されました。建造物とともに会堂家具45点、正門、設計図面147枚が附(つけたり)として指定されています。なお、奈良県では初めて重要文化財となったキリスト教建築になります。

工事期間と工事中の会堂のご利用について

 耐震対策工事は、2019(令和元)年10月から着手し、工事完了は2020(令和2)年11月末の予定となっております。工事は建物の外部と内部の両方で行いますが、土曜日・日曜日の公開日には、これまでどおり会堂内での礼拝や見学は可能となっております。ただし、工事に必要な足場等が設置されるため、残念ながら建物本来の姿をお見せすることができません。どうかご理解いただけますようよろしくお願いいたします。
 また、工事の状況によっては、公開日であっても内部への立ち入りができない場合がございますので、お越しの際にはホームページにて状況をご確認ください。
<※2019年12月28日より当面、見学することはできません。ご了承ください。>

会堂 耐震対策工事パンフレット(株式会社文化財構造計画)