見学の方へ

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和風のキリスト教会
 日本聖公会奈良基督教会

奈良基督教会は、16世紀にカトリック教会から分離・独立した英国国教会(Anglican Church )の流れを汲む日本聖公会に属します。この宗派の日本での活動では、アメリカ聖公会の宣教師ウィリアムズ主教が来日した安政6(1859)年に遡ります。
奈良基督教会は、聖公会が奈良での伝道を明治18(1885)年に開始して以来移転・新築を経たのち、興福寺境内西南角1600坪余りを購入、昭和5年に現在の形で竣工しました。きわめて珍しい和風形式を採用した背景には、まずもって奈良固有の景観問題がありました。奈良では、明治27年に宮内省の建築家・片山東熊(嘉永6~大正6年)が純洋風の帝室奈良博物館(現・国立博物館)を建てたときに、古都の景観にそぐわないと酷評されました。それ以降わずかな例外(たとえば奈良女子大学)を除いて公官庁であれ駅舎であれ、また素材が何であれ和風の外観を採ることになりました。
奈良基督教会は、同教会の信徒で郡山出身の宮大工であった大木吉太郎(明治20~昭和46年)を設計者にえて、興福寺に隣接するという立地条件のなかで、キリスト教会建築の形式と日本建築の粋を深い理解力と伝統的な技によって見事に融合させた建築です。
外観は入母屋破風と千鳥破風を組み合わせた和瓦葺きの屋根、真壁造りの壁面構成という寺院風、内観は吉野檜の素木の柱も清々しい神社風に聚楽壁という数寄屋の要素もまじえ、日本人の眼に実に素直に馴染みます。信徒の育てた桐材を用いた繊細な欄間の透かし模様は、洗練されて軽やかです。しかし縦長の堂内空間は本質的に神社仏閣とは異なります。平面構成は三廊式の長堂、身廊立面はトリフォリム(欄間)、クリアストーリー(高窓)をそなえた三層構成、側廊窓は二層構成と西欧のキリスト教会建築の定石そのままです。
そして建築本体はもとより、当時の奈良帝室博物館長・久保田鼎の監修により正倉院宝物の七宝技法を駆使した十字架や聖杯などの聖具、マルタ十字と鳩というキリスト教の象徴を刻んだ瓦の意匠にいたるまで、古都にふさわしく対応した異文化の理想的形式が見られます。
また、1987年には教会の建物に合わせ、西洋松材で建造されたパイプオルガン(ドイツ ウェルナー・ボッシュ社製 18ストップ1200余パイプ 平行ペダル)が設置され今日に至っています。