「子ども祝福式のおはなし」
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ルカによる福音書10章25~37節
今日は奈良基督教会では子ども祝福式がおこなわれます。いつもとはちょっと違う感じでお話しをします。
ある日イエス様のところに、サム君という子が来ました。サム君は毎日、神さまが喜ばれそうなことをいっぱいしているつもりだけど、本当に神さまは喜んでくれているのか、心配になったそうです。イエス様がサム君に、いつもどんなことをしているのか聞いてみると、サム君はこう答えました。
「それはね、おうちの人が言ってたようにすること。神さまのことを大好きでいなさい。そして周りの人と仲良くしなさい」。
イエス様は言います。「そうだね。じゃあ、そうしたらいいよ」。それに対してサム君は、「でもね、僕、よくわからないんだ。周りの人って、誰のこと?おうちの人?お友達?それとも。。。」
そこでイエス様は、こんなお話しをしました。
ある日のこと、ごんざぶろうが買い物をして帰ろうとしていました。ごんざぶろうはちょっとした買い物だから、もっと早く帰れると思っていたそうです。でも、とても遅くなってしまいました。道は暗く、とても寂しい場所です。ごんざぶろうはちょっと怖くなってきました。
その姿を、一匹の黒ウサギが見つけました。彼は強盗です。黒ウサギはごんざぶろうを襲うことにしました。
「やい、そこの熊!ちょっと待て!お前、なかなかいいもん持ってるな。それ全部、俺に寄こせ!」
ごんざぶろうはびっくりして答えます。「え、何ですって。そんなことできないよ」。
ごんざぶろうは必死に逃げようとしましたが、黒ウサギに「コチョコチョ」されて力が抜け、持っていたものを全部取られてしまいました。
かわいそうにごんざぶろうは、その場に倒れてしまいました。
「あ~あ。み~んな、持って行かれちゃった。買い物したものも、お金も、バッグも。ひっくり返ったとき足も擦りむいたし、血が出て痛いし、歩けないし。誰か、助けてくれないかなあ」。
ごんざぶろうがそう思っていると、向こうの方から誰かやってきます。
「ふう、すっかり遅くなってしまったぞ。ここは暗い道だから、急いで歩こう。あれ、あそこに誰か倒れているぞ」。
それはいつもみんなにいろんなことを教えてくれている偉い先生でした。ごんざぶろうはその人がいつもみんなの前に立って、話しているのを知っていましたから、きっと助けてくれると思い、お~い、先生!助けてよ~」と叫びました。
ところがその偉い先生は、「うわ、こっちに気づいたぞ。いかんいかん。今からもっと偉い人とご飯を食べる約束があるのに。遅れたら大変だ」とつぶやき、道の向こう側を歩いていきました。
ごんざぶろうは言いました。「ちょっと、どうして行っちゃうの?ひどいよ。助けてよ」。でもそんな声も届かずに、偉い先生は行ってしまいました。
しばらくすると、今度は向こうから女の人が歩いて来ました。
「ふ~。毎日、毎日、忙しい、忙しい。まだこれから、お料理作りにいかなくっちゃいけないなんて。本当に嫌になっちゃうわ」。それはいつもレストランでニコニコしている人でした。
ごんざぶろうは叫びます。「ねえ、ねえ、お姉さん。お願い。僕を助けてよ。僕、よくみんなでレストラン、行ってたでしょ。そのときに、『何でもお申し付けください』って言ってくれたじゃないか。だから助けてよ。
ところがその女の人はこう答えます。「まあ、何を言っているのかしら。仕事のときとプライベートは別よ。大体、こんなに血を流して、わたしのきれいな洋服についたら、どうしてくれるの。本当に嫌になっちゃうわ」。そして女の人はそのまま行ってしまいました。
ごんざぶろうは思いました。「ひどいや。偉い先生はいつでも、僕はみんなのために働きますって言ってたんだ。レストランのお姉さんもいつもニコニコ笑ってくれてた。でもなんだい。僕が本当に困っているときは、知らんぷり。助けてもくれない。あ~あ、どんどん寒くなってきたなあ」。
そこにまた、誰かが歩いて来ました。それは隣の村のジョージでした。ごんざぶろうは本当は「助けて~」って叫びたいけど、無理だということを知っていました。なぜならごんざぶろうの村とジョージの村は、とっても仲が悪かったからです。
この前も村と村の間にあるぶどうの木がどっちの物だってケンカになったし、川で採れた魚もお互いに自分のだと言い合いになったし。だからごんざぶろうも、隣の村の人とは口も利かないし、ご飯だって一緒に食べないようにしていたのです。
ところがジョージは、ごんざぶろうが倒れているのに気づくとそばに来ようとします。ごんざぶろうは叫びました。「ダメだよ。僕のところに来たら、村の人に怒られちゃうよ」。
でもジョージは近づいてきてごんざぶろうの傷を確かめ、病院に連れていってあげようとします。
ごんざぶろうは「ダメだよ、ダメだよ。うれしいけど、みんなに叱られちゃうよ。それに僕、お買い物したものも、お金も、バッグも全部取られちゃったんだ。だから病院に行っても、お金が払えないんだ」と言います。
ジョージはそんなごんざぶろうにニッコリ笑いながら、こう言いました。「いいんだ、いいんだ。そんなこと、気にしないで。病院で足りなくなったらいけないから、ちゃんと多めに支払っておくから。さあ、この羊に乗りなさい」。
こうしてジョージは、ごんざぶろうを連れて、病院で手当てをしてもらい、お金も払ってあげました。
イエス様はサム君にこのお話しをした後、質問しました。「偉そうな男の人と、レストランの女の人と、それからジョージ。この三人のうちで誰が一番ごんざぶろうと仲良くできたかな」。
「それは、ジョージさ」と答えるサム君に対し、イエス様はこう言われました。「そうだね。サム君、そしてこのお話しを聞いているみんなも、ジョージのようになれたらいいね」。
わたしたちの周りには、いろんな「壁」があります。壁の中では仲良しだけど、壁の外の人とは交わろうとしない。でも壁の外に一歩出て、一緒に歩むときに、少しずつ平和な世界が訪れるのではないでしょうか。「Love&Peace」、求めていきましょう。