2023年4月2日<復活前主日>説教

「十字架につけろ」

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 マタイによる福音書27章1~54節

 復活前主日、わたしたちは赤い祭色の中で今日の礼拝を守っています。赤という色は火や血を示します。主日の礼拝で赤が用いられるのは聖霊降臨日と、今日、復活前主日となります。

 今日読まれた福音書は、大変長い箇所です。教会によっては朗読劇をおこなうこともあるでしょう。27章1節から54節のほかに、カッコに入れられた選択可能な箇所26章36節から75節、27章55節から66節もあります。そこには様々な場面が描かれ、そしていろいろな人が登場します。

 ゲツセマネの祈りの場面では、ペトロ、ヤコブ、ヨハネという3人の弟子が登場します。イエス様を逮捕するために来たのは、12弟子の一人であるユダと、祭司長や民の長老たちの遣わした大勢の群衆でした。イエス様が逮捕されたときに、弟子たちは皆、イエス様を見捨てて逃げてしまいます。

 逮捕されたイエス様が最初に連れていかれたのは、大祭司カイアファのところでした。そこには律法学者たちや長老たちが集まっていました。祭司長たちと最高法院の全員は、イエス様を死刑にしようと不利な偽証を求めます。偽証人は何人も現れます。偽証人の言葉からは証拠は得られませんでしたが、大祭司はイエス様の言葉を聞いて「神さまに対する冒涜だ」と服を引き裂きました。周りの人々もそれを聞いて、「死刑にすべきだ」と答え、イエス様の顔に唾を吐きかけ、こぶしで殴り、平手で打ち、「誰が殴ったか答えてみろ」と言いました。

 ペトロは大祭司の屋敷の中庭にまでついて来ましたが、鶏が鳴く前にイエス様のことを三度、知らないと言ってしまいます。

 夜が明けると祭司長たちと民の長老たち一同はイエス様を殺そうと相談し、総督ピラトにイエス様の身柄を渡しました。ピラトはどんな訴えにも答えないイエス様を非常に不思議に思います。ピラトは人々がイエス様を引き渡したのはねたみのためだと分かっていたので、バラバかイエス様か、どちらを釈放してほしいのかと人々に尋ねます。しかし祭司長たちや長老たちはバラバを釈放するように群衆を説得します。ピラトの「どちらを釈放してほしいのか」という言葉に人々は、「バラバを」と答えます。そしてイエス様はどうしたらよいのかと聞かれると、「十字架につけろ!」と叫び続けました。ピラトはバラバを釈放し、イエス様を鞭打ってから、十字架につけるために引き渡しました。

 総督の兵士たちは、イエス様の周りに部隊の全員を集めます。そしてイエス様の着ている物をはぎ取り、赤い外套を着せ、茨で冠を編んで頭に載せ、右手に葦の棒を持たせて侮辱します。そして外套を脱がせて元の服を着せ、十字架につけるために引いて行きました。兵士たちはイエス様を十字架につけるとくじを引いてその服を分け合いました。

 二人の強盗がイエス様と一緒に十字架につけられていました。そこを通りかかった人々は「神の子なら自分を救ってみろ。そして十字架から降りて来い」とののしります。祭司長たちも律法学者たちや長老たちと一緒にイエス様を侮辱して言います。「他人は救ったのに、自分は救えない。今すぐ十字架から降りるがいい。そうすれば、信じてやろう」。一緒に十字架につけられた二人の強盗たちも、同じようにイエス様をののしりました。

 イエス様の十字架の場面にいたるまで、様々な人物が登場しました。

    ペトロ、ヤコブ、ヨハネ、ユダ、

    祭司長たち、民の長老たち、律法学者たち、群衆、人々、

    大祭司カイアファ、総督ピラト、兵士、

    バラバ、二人の強盗たち。

 イエス様の十字架の周りには、たくさんの人たちがいました。イエス様の代わりに十字架を背負ったキレネ人シモン、イエス様の十字架を遠くから見守っていた女性たち、イエス様の遺体を引き取りに来たアリマタヤのヨセフ、そして「本当に、この人は神の子だった」と言った百人隊長。

 しかし彼ら以外は、イエス様を裏切り、イエス様を見捨て、イエス様を死刑にしたいと思い、イエス様を侮辱し、イエス様をののしり、イエス様のことを知らないと言い、イエス様を十字架につけろ!、十字架につけろ!、十字架につけろ!と叫び続けたのです。

 あなたはどこにいますか?イエス様が十字架につけられたとき、あなたは一体どこにいるのでしょうか?

 先週マラナタ会の中で、「十字架の道行」をおこないました。イエス様の十字架の、14の場面を思い起こしながらお祈りをいたしました。それぞれの場面に、登場人物がいました。涙を流し、イエス様に寄り添おうとする人がいました。でも逆に、イエス様を十字架へと強いる人たちがいました。

 あなたはどこにいますか?イエス様が十字架につけられたとき、あなたは一体どこにいるのでしょうか?

 「裏切り者おまえは」という聖歌があります。147番です。その原詞は「Were you there when they crucified my Lord.」です。直訳すると、「彼らが私の主を十字架につけたとき、あなたはそこにいましたか」となります。3節までありますが、歌詞をお読みしたいと思います。

  裏切り者 おまえは  イェスを十字架につけた

    おお 主よ 心おののき 震える あの日を思い出して

  裏切り者 おまえは  イェスを木に打ちつけた

    おお 主よ 心おののき 震える あの日を思い出して

  裏切り者 おまえは  イェスを墓穴にいれ

    おお 主よ 心おののき 震える あの日を思い出して

 わたしは確かにイエス様を裏切り、わたしは確かにイエス様を十字架につけ、わたしは確かにイエス様を木に打ちつけ、わたしは確かにイエス様を墓に入れました。そしてイエス様はそのことを知っていながら、黙って十字架への道を歩んでいかれました。

 イエス様には、その先の道が見えていました。その先にある神さまのご計画を知っていました。そして何よりも、自分の弱さのために十字架を背負って歩くことのできないわたしたち一人ひとりを救うために、ご自分が十字架にかかり、血を流されたのです。

 その贖いの血に希望を託し、わたしたちは歩んでいくのです。イエス様の十字架の向こうにある救いを信じ、わたしたちに命を与えてくださるイエス様のご復活を待ち望み、この一週間を過ごしてまいりましょう。

 そして来週、共に主のご復活を喜ぶことができればと思います。